ストックレー邸

ストックレー邸

20世紀初頭のヨーロッパは、アールヌーボーで溢れていました。ベルギーの首都ブリュッセルは、アールヌーボー建築の宝庫としても有名です。そのアールヌーボー隆盛の中で、ウィーンの建築家ヨーゼフ・ホフマンによる「ストックレー邸」は、アールデコの先駆けとなりました。2009年には、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されています。

●ブリュッセルのアールヌーボー・アールデコ

ブリュッセルのアールヌーボー建築は街中にあり、全てが内部の見学が可能ではありませんが、外観を見て歩くだけでも、19世紀後半から20世紀初頭の近現代文化の散策を楽しむことができます。

 一番のお勧めは、ブリュッセル南部の「ルイーズ大通り」です。パリのシャンゼリゼのような高級ブランドショップが集まるエリアですが、アールヌーボー建築の世界遺産「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」に登録されている4軒のうちの3軒〈建築家ヴィクトル・オルタの家〉〈タッセル邸〉〈実業家ソルヴェイの家(予約すれば見学可)〉があり、特にオルタの家はアールヌーボーに関する美術館として一般公開されていて必見です。他にもこのエリアには、オルタと並ぶ有名なアールヌーボーの〈建築家モール・アンカールの家〉や〈建築家ヴァン・リュイセルベルグの家〉もあって、その作品群も集まっています。

 「ストックレー邸」はブリュッセル東部にある「サンカントネール公園」周辺です。このエリアには、世界遺産として登録されているオルタの建築の残りの一つ「コンゴ領事務総長ヴァン・エトヴェルドの家」があります。ここは現地のガイドツアーに参加すれば見学が可能です。

●世界遺産「ストックレー邸」の見どころ

「ストックレー邸」は、ウィーンの建築家ヨーゼフ・ホフマン(1870~1956年)によって、1905~1911年に作られたモダニズム建築の傑作です。曲線を多用する装飾的なアールヌーボーとは異なり、直線的な造形デザインであり、当時のアールヌーボーが流行に逆らい、1920年頃から流行したアールデコの特徴をいち早く生み出したことでも注目です。

 邸宅は、建築だけでなく、庭園や装飾、内装・家具・食器まで全てを内包した総合芸術作品と考えることができます。特に食堂に描かれたグスタフ・クリムトの素描に基づいたモザイク画は有名です。

 残念ながら「ストックレー邸」は数年前まで近親者が住んでいた私邸であり、現在(2012年)まで内部の一般公開はされていません。しかし、外観のみでも見る価値はあるでしょう。

●ブリュッセルの地理とアート観光

ブリュッセルは見どころがたくさんある人気の観光地です。世界遺産「グラン=プラス(前記事参照)」でもご紹介したように中世の歴史的建造物を見学したり、本記事のように近代の有名建築を散策したりと、テーマを決めて観光すると楽しいでしょう。ここでは、さらにアートをテーマにご紹介します。

 ブリュッセルはヨーロッパでも特に美術館・博物館が多い都市です。その中でも、「芸術の丘(モン・デ・ザール)」は一番に訪れたいところです。ブリューゲルやルーベンスなどの傑作を揃えた〈王立美術館〉や音も楽しむことができる〈楽器博物館〉、ベルビュー宮の中にある〈ベルビュー博物館〉の他、大規模な展覧会やコンサートが開催される〈パレ・デ・ボザール〉があります。また2009年に、王立美術館別館として〈マグリット美術館〉がオープンしました。ルネ・マグリットは、ベルギーを代表するシュルレアリスムの画家で、ブリュッセルで活躍しました。

 他にも市内には、ブリュッセルの伝統人形劇が上演・展示されている〈王立トーヌ博物館〉、〈衣装とレース博物館〉、〈王立美術歴史博物館〉、〈ベルギー鉄道博物館〉など、じっくり見て回りたいなら、何日も必要でしょう。