プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体

プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体

「ルネサンス三大発明」といえば、羅針盤・火薬・活版印刷です。そのうち活版印刷業は15世紀後半にはヨーロッパ中に普及し、アントウェルペン(英語でアントワープ)では、フランス出身の出版業者クリストフ・プランタンが「オフィキナ・プランティニアナ」を開業しました。その工房は19世紀まで事業が続けられ、後に博物館となって現存しています。2005年には、「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」として、世界遺産(文化遺産)に登録されました。

●アントウェルペン(アントワープ)の黄金時代

アントウェルペンは、ベルギー・フランダース地方の代表的な都市です。街の起源は、ローマ帝国時代の集落までさかのぼると考えられています。その後、街の支配下はめまぐるしく移り変わりますが、現在のように国際的な港を持つ商業都市としての地位を築いたのは、15世紀後半からです。

 中世後期において、それまで経済の中心だったブルッヘが衰退し、アントウェルペンへと移行していきました。16世紀にはヨーロッパの「大交易時代」にあって、アルプス以北で最大規模の都市として、国際経済の中心地となっています。さまざまな交易船が寄港し、また宗教的にも寛容であったため、文化的にも一大拠点として発展していったのです。その背景にあって、クリストフ・プランタンは出版業を興し、またバロック絵画の巨匠ルーベンスもこの地で誕生しました。

●世界遺産「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」の見どころ

「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」は、16世紀の大印刷業者・出版人であったクリストフ・プランタンの邸宅・工房を母体に作られた印刷博物館です。世界最古の印刷機や同時期の活字一式を保有しているほか、往時の印刷・製本の工程を展示しています。

 工房は、娘婿のヤン・モレトゥスとその子孫に引きつがれ、プランタンの死後も長くヨーロッパで名声を馳せた印刷所であったため、所蔵品は、書物および写本3万冊、木版画1万5千枚、銅版画3千枚、インキュナブラ(初期の活版印刷の活字印刷物)150冊と、印刷博物館としては世界最大規模です。三十六行聖書といった稀覯書も蔵書に含まれていますので、愛書家・古書蒐集家には垂涎の場所でしょう。また、工房の最盛期には、ルーベンスやブリューゲルなどの巨匠も出入りしており、館内には絵画が彩られています。

 さらに、当時の文化人との往復書簡や会計記録などの古文書は、「オフィキナ・プランティニアナの事業文書」として、2001年にユネスコの「世界記録遺産」に登録されています。

●アントウェルペン(アントワープ)の地理と観光

アントウェルペンは、首都ブリュッセルから電車で30分、スヘルデ川の河口の、世界第三位の港街です。

 この街で最も有名なのは、『フランダースの犬』でネロ少年が夢みた、巨匠ルーベンスの名高い《キリストの降架》と《キリスト昇架》を収蔵した「聖母大聖堂」でしょう。他にも聖堂内には美術館のように多くの宗教芸術の傑作で溢れています。また、この聖堂の持つ優美な塔には、世界遺産の鐘楼もあり、まさに街のランドマークです。

 街には他にも多くの宗教建築があり、ルーベンスが眠る「聖ヤコブ教会」や、ルーベンスやファン・ダイクなどのバロック絵画や彫像で彩られた「聖パウロ教会」など、枚挙のいとまがないほどです。

 宗教建築だけではありません。アントウェルペンの中心広場である「グロート・マルクト」は市庁舎やギルドハウスに囲まれた美しい街並みを見せ、「グルン広場」にはホテルやカフェが並び、大聖堂を美しい姿を見せる人気のスポットです。さらに、世界遺産の印刷博物館の他、王立美術館や現代美術館、ダイヤモンド博物館、ルーベンスの家など、見どころ満載です。